総合課税と分離課税
「総合課税」と「分離課税」がある
では「事業所得+一時所得」のように、複数の種類の所得がある場合はどうなるでしょう。
それぞれの計算方法で算出した金額を単純に合算して1年間の所得金額にできればいいのですが、そうはいきません。
所得への課税には、「総合課税」と「分離課税」の2通りの方式があります。
総合課税では、複数の種類の所得を足し算をしてから税額を計算します。
たとえば給与所得があるサラリーマンがアパート経営もしている場合は、給与所得と不動産所得を合算した金額をもとに税額を計算します。
これに対して分離課税の場合は、ほかの所得と分けて単独で所得税を計算します。
たとえば土地や建物を売却すると、そこから生じた譲渡所得は分離課税となり、ほかの所得と合算せずに定められた計算方法で税額を出します。
その後で、総合課税で計算した税額と分離課税で計算した税額を合計します。
なお分離課税には、確定申告が必要な「申告分離」と、所得を受け取るときにすでに源泉徴収されている「源泉分離」の2種類があります。
株式の売買やFX(外国為替証拠金取引、いわゆる「外貨取引」のこと)で得た所得は、分離課税です。
これには確定申告が必要な「申告分離」になるケースと、確定申告をする必要がない「源泉分離」になるケースの両方があります。
総合課税になるものは……
では、総合課税となるものを並べてみます。これらの所得は全部足して税額を計算します。なお同じ種類の所得でも、その内容によって「総合課税」になったり「分離課税」になったりすることがあります。
- 事業所得のうち、個人事業主やフリーランスの人の所得
- 不動産所得のすべて
- 利子所得のうち、国外で支払われる預金の利子
- 配当所得のうち、株式の配当金などで源泉分離を選択しなかった場合
- 給与所得のすべて
- 雑所得のうち、公的年金や原稿料、講演料など
- 譲渡所得のうち、機械やゴルフ会員権、書画骨董、特許権などの譲渡によるもの
- 一時所得のうち、生命保険などの一時金、賞金など
では分離課税は……
続いて、分離課税となる主なものを示します。
- 事業所得のうち、株取引や先物取引、FX取引(ある程度本格的にやってる場合)
- 利子所得のうち、預貯金や公社債などの利子(源泉分離課税になります)
- 配当所得のうち、株式の配当金など(源泉分離課税および申告分離をした場合)
- 雑所得のうち、株取引や先物取引、FX取引(アルバイト程度の場合)
- 一時所得のうち、一部の保険金による所得
- 山林所得のすべて
- 退職所得のすべて
赤字を所得と相殺できることもある
所得を得るためにがんばったのに、意に反して赤字が出てしまうこともあります。
その損失額を、ほかの所得額から差し引くことができる場合があります。
これを「損益通算」といいます。
たとえば個人事業を1年間やった結果、うまくいかずに赤字を出したとします。
すると原稿料などほかで得た所得からその赤字額を引いて計算することができるので、その分納める所得税は少なくなります。
損益通算ができる所得は「事業所得」「不動産所得」「譲渡所得」「山林所得」の4種類で、具体的には次のような場合です。
- マイホームを売ったが買ったときの価格よりも安く赤字になった
- アパートやマンション経営で赤字が出た
- 個人事業で赤字を出した
なお株式の売却損は、上場株式などの配当所得(申告分離課税を選択した場合)から引くことができます。
損益通算にはほかにも細かいルールがあるので、不明点等は弊社へお問い合わせください。
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