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NPO法人は融資を受けられる?その方法やポイントを解説

2021年10月20日(水)10:36 AM

NPO法人は長い間銀行融資が受けられず、資金繰りが難しいとされてきました。しかし、2015年10月1日に法改正されたことで、信用保証制度が受けられる対象になり、銀行融資が利用できるように変わりました。[注1]

この記事では、NPO法人が受けられる融資や、融資を受けるために大切なポイントを紹介します。

NPO法人でも融資を受けられる

「NPO法人は非営利団体なので、融資は受けられないのでは?」と考えている人もいるでしょう。しかし、NPO法人でも融資を受けることは可能です。
具体的に利用できる融資制度は3つあり、それぞれ内容や利用できる条件が異なります。

NPO法人が利用できる融資制度3選

NPO法人が利用できる融資制度には、日本政策金融公庫の「ソーシャルビジネス支援資金」、中央労働金庫の「ろうきんNPO事業サポートローン」があります。また、2015年10月1日の法改正でNPO法人も銀行からの融資が受けられるようになりました。[注1]

以下、それぞれの融資制度について詳しく解説します。

ソーシャルビジネス支援資金

ソーシャルビジネス支援資金とは、日本政策金融公庫が実施するソーシャルビジネスに取り組む中小企業・小規模事業者、NPOに向けた融資制度です。
日本政策金融公庫の「NPO法人向け融資実績の推移」の図では、令和元年には1,155件、令和2年には1,803件の融資実績がありました。[注2]
金額も令和元年の71億から令和2年には196億円まで増え、年々融資実績を伸ばしていることが分かります。

融資限度額は、担保不要とする融資の場合は4,800万円、担保ありの場合は7,200万円(運転資金4,800万円)までとなっています。
設備資金は20年以内、運転資金は7年以内の返済期限です。利率は業種などによって変化します。
担保・保証人は相談のうえ決められますが、不要にする制度も用意されており、より自由な形で融資を受けられます。

融資を受ける際は、全国にある日本政策金融公庫の支店窓口での手続きが必要です。その際は、事業計画書、会社案内や決算書などを用意しなければなりません。

ろうきんNPO事業サポートローン

中央労働金庫が実施するNPO法人専用の融資制度です。[注3]
融資を受けるためには、法人格取得前も含めて3年以上事業を継続しており、法人格取得後1事業年度以上の決算が確定していなければなりません。

融資金額は無担保貸付で1,000万円以内、有担保貸付は5,000万円以内かつ、中央労働金庫が算出する担保価値の範囲内です。預金担保貸付は1億円以内かつ担保とする定期性預金残高の範囲内となっています。

返済機関は手形貸付なら1年以内、証書貸付の運転資金は1年以内、設備資金は10年以内です。金利は変動型金利で、借り入れた時点の金利が適用されます。保証人には、NPO法人の運営・経営責任者1名以上が必要です。

融資を希望する際は、最寄りの営業所で相談しましょう。必要書類を持って申し込みを済ませたら、審査・訪問調査を経て融資が決まります。

信用保証制度

銀行融資を受けるには、信用保証協会の信用保証制度を受けなければいけません。注意しなければいけないのは、すべてのNPO法人が保証の対象ではないということです。

2014年9月に中小企業庁が行なった「NPO法人など新たな事業・雇用の担い手に関する研究会 中間論点整理」の「現状の中小企業政策におけるNPO法人の位置付け」では、中小企業者の振興に資する事業を行うNPO法人であれば中小企業政策の対象であると書かれています。[注4]
さらに、以下のいずれかに該当する場合も同じく対象内であるとされています。

  1. 中小企業者と連携して事業を行うもの
  2. 中小企業者の支援を行うもの
  3. 中小企業者の支援を行うために中小企業者が主体となって設立したもの(社員総会における表決権の二分の一以上を中小企業者が有しているもの)
  4. 新たな市場の創出を通じて、中小企業の市場拡大にも資する事業活動を行う者であって、有給職員を雇用するもの

中小企業政策の対象であれば、信用保証制度を受けられるNPO法人である可能性が高いということが分かります。

さらに、「中小企業政策におけるNPO法人の位置付けの検討」では、事業型NPO法人が中小企業と同じように事業を行なっていると考えたうえで、以下4つの指標を掲げています。[注4]

  1. 特定非営利活動で継続した収益事業(課税事業かつ自主事業)を行なっていること
  2. 1の収益事業からの収益により雇用を創出していること
  3. 多様な主体と連携し、地域の課題解決や活性化に繋がる活動を行なっていること
  4. 市場の競争において有利となる税制上の恩典を有していないこと

以上4つを満たしていれば、「事業型NPO法人」として信用保証制度の審査を受けられる可能性があります。信用保証は最寄りの信用保証協会へ、その後の手続きは金融機関へ相談してください。

NPO法人が融資を受ける方法やポイント

「中小企業政策におけるNPO法人の位置付けの検討」で掲げられた4つの指標から、融資を受けるために大切なポイントが読み取れます。それは、借りた資金を返済できる力があるかどうか、得た収益から雇用を創出できるかどうかです。

資金繰り表を提出したり、NPO法人会計基準を守った財務諸表を提出したりするなどして、返済能力に問題がないことを証明しましょう。また、有給職員の雇用実績や給与実績などもまとめておくと便利です。

まとめ

融資を受けるには信頼を証明すること

NPO法人を運営するには資金が必要です。目的を達成するためにも、自分が受けられる融資があるのか、融資限度や金利はどのくらいかを確認しておきましょう。融資を受けるときは、借りたお金を返せるかどうか、雇用を創出できるかを証明する必要があります。日頃から帳簿に記入したり、専門家の力を借りたりするなどして、能力・実績を証明できるようにしておきましょう。

[注1]中小企業庁:10月1日から特定非営利活動法人(NPO法人)が信用保証制度を利用可能となります
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2015/150807hosyo.htm

[注2]日本政策金融公庫:ソーシャルビジネス支援資金
https://www.jfc.go.jp/n/finance/social/yushi.html

[注3]中央労働金庫:NPO事業サポートローン
https://chuo.rokin.com/loan/npo_loan/

[注4]中小企業庁:NPOなど新たな事業・雇用の担い手に関する研究会 中間論点整理
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/npo/2014/1400930npo.pdf


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