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確定申告の所得控除は15種類!その条件や計算方法を紹介

2021年11月02日(火)3:38 PM

確定申告の所得控除の種類は15種類あります。
税金の負担を少なくするためにも、条件に該当する控除があれば漏れなく申告したいものです。

この記事では、所得から控除される種類や、それぞれの対象者と条件、計算方法を国税庁のHPに基づいて15種類に分けて紹介します。[注1]

[注1]国税庁|所得金額から差し引かれる金額(所得控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/shoto320.htm

確定申告の所得控除の種類別の対象者・条件・計算方法

控除の項目15種類をそれぞれ見ていきましょう。

1. 「雑損控除」は損害を受けたとき

火災や自然災害、盗難などによって損害を受けた方が対象です。
計算方法は以下の2つのうち、いずれか多い方の金額で控除します。

  • (差引損失額)ー(総所得金額等)×10%
  • (差引損失額のうち災害関連支出の金額)ー5万円

損失額が大きく、その年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以後3年間を限度に繰り越して控除できます。

2. 「医療費控除」は支払った医療費が一定額を超えたら

実際に支払った医療費が一定額(基本的に10万円)を超えた場合に控除できます。
納税者本人、生計を共にしている配偶者や、その他の親族の医療費を合算して控除可能です。

年間の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額を超えれば医療費控除ができます。

計算方法は以下の通りです。

  • (実際に支払った医療費の合計金額-保険金などで補てんされる金額)-10万円

総所得金額が200万円未満の場合は以下の通りです。

  • (実際に支払った医療費の合計金額-保険金などで補てんされる金額)-(所得金額合計×5%)

医療費は最高200万円まで控除可能です。

3. 「社会保険料控除」はその年のすべての保険料が対象

健康保険料や厚生年金保険料、国民年金、国民年金基金などを支払った場合に適用できます。
生計を共にしている配偶者や子ども、両親などの保険料を支払ったときにも適用可能。控除額の上限はありません。

計算方法は簡単で、1年間に支払った社会保険料すべてを所得から差し引きます。

4. 「小規模企業共済等掛金控除」も掛け金すべてが対象

小規模企業共済、個人型確定拠出年金、地方公共団体が実施する心身障害者扶養共済制度などの掛け金支払い分が対象です。

小規模企業共済等で支払った掛け金の全額を所得から差し引きます。

5. 「生命保険料控除」は契約時期によって制度が変わる

生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合が対象です。
保険期間が5年未満の貯蓄保険、生命保険などは控除の対象にはなりません。

計算方法は以下のように2種類あり、保険を契約した時期によって新契約と旧契約とに分かれ適用制度が変わります。

新契約(平成24年1月1日以降)

1年間の支払い保険料等
(生命保険・介護・個人年金)
控除額
20,000円以下支払い保険料等の全額
20,001円~40,000円支払い保険料等×1/2+10,000円
40,001円~80,000円支払い保険料等×1/4+20,000円
80,001円以上一律で40,000円

新制度では生命保険料、介護医療保険料と個人年金保険料がそれぞれ最高4万円まで控除可能です。
すべて合わせると最高12万円まで控除できます。

旧契約(平成23年12月31日以前)

1年間の支払い保険料等
(生命保険・個人年金)
控除額
25,000円以下支払い保険料等の全額
25,001円~50,000円支払い保険料等×1/2+12,500円
50,001円~100,000円支払い保険料等×1/4+25,000円
100,001円以上一律で50,000円

旧制度では介護保険料は対象外ですが、生命保険料と個人年金保険料が、それぞれ最高5万円まで控除可能です。

6. 「地震保険料控除」は長期損害保険料も対象

対象はその年の地震保険料の掛け金の支払い分と平成18年12月31日までの契約である長期損害保険の支払い分です。

合わせて控除を受けたい場合は、それぞれの方法で計算した金額の合計額(最高で5万円)が控除されます。

計算方法は以下の表の通りです。

区分年間の支払い保険料の
合計
控除額
(1)地震保険料50,000円以下支払い金額の全額
50,000円超一律50,000円
(2)旧長期損害保険料10,000円以下支払い金額の全額
20,000円以下支払い金額×1/2+5,000円
20,000円超15,000円

7. 「寄附金控除」はふるさと納税や災害関連などの寄付をしたら

対象は国や地方公共団体、公益社団法人、日本赤十字社などに一定額の寄付をした場合です。

計算方法は「1年間に寄付した金額の合計」か「1年間の総所得金額などの40%相当額」のうち、どちらか低い金額から2,000円を差し引きます。

8. 「障害者控除」は条件によって控除額が変わる

対象は納税者本人、または生計を共にする配偶者や子どもなどの扶養家族が障害者である場合などです。
扶養家族が16歳未満でも適用できます。

計算方法は、障害の程度によって「障害者」と「特別障害者」に分けられ控除額が変わります。

区分控除額
障害者27万円
特別障碍者40万円
特別障害者と同居75万円

9. 「寡婦控除」は配偶者と離婚・死別した女性が対象

納税者本人が寡婦の場合に適用可能で、主な条件は以下の通りです。

  • その年の12月31日時点で「ひとり親」に該当しない
  • 合計所得が500万円以下で配偶者と離婚後に婚姻をしていない、扶養親族がいる人
  • 合計所得が500万円以下で配偶者と死別後に婚姻をしていない、配偶者の生死が明らかではないなどの人

控除額は一律で27万円です。

10. 「ひとり親控除」は条件に該当すれば男女関係なく適用

対象は「ひとり親」であることで、その年の12月31日時点で婚姻をしていない、配偶者の生死が明らかではないなどの人のことです。

控除を受けるには、さらに以下の3つの条件に該当している必要があります。

  • 事実婚状態の人がいない
  • 生計を共にする子どもがいること。その場合の子どもの総所得金額が48万円以下、他の人の扶養親族などではない
  • 合計所得金額が500万円以下

一律35万円の控除が受けられます。

11. 「勤労学生控除」は働きながら学校で学んでいる人が対象

納税者が働きながら大学や職業訓練校などに通学している場合に適用可能です。
勤労学生と認められる条件は以下の3点すべてに該当する必要があります。

  • その年の12月31日時点で勤労による所得がある
  • 給与所得が130万円以下
  • 特定の学校(学校教育法に規定する高等学校、大学など)の学生

一律27万円の控除が受けられます。

12.「配偶者控除」は納税者の所得によって控除額が変わる

対象は役所に婚姻届を提出済みの配偶者(民法上の配偶者)がいる人です。

条件は以下の3点すべてに該当する必要があります。

  • 納税者が民法上の配偶者と生計を共にしている
  • 配偶者の年間所得が48万円以下(または給与収入が103万円以下)
  • 青色申告者の事業専従者としてその年、一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者ではない

以下の表の通り、納税者本人の合計所得金額によって控除額が決まっています。

合計所得金額控除額
900万円以下38万円
950万円以下26万円
1,000万円以下13万円

13. 「配偶者特別控除」は配偶者の所得に応じて控除額が変わる

納税者の民法上の配偶者が48万円を超える所得がある場合に適用されます。

条件は以下の要件にすべて当てはまる人です。

  • 納税者の合計所得金額が1,000万円以下
  • 民法上の配偶者と生計を共にしている
  • 青色申告者の事業専従者として、その年一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者ではない
  • 年間の所得金額が48万円を超え133万円以下
  • 配偶者が配偶者特別控除を受けていない
  • 配偶者が他の人の扶養に入っていない

計算方法は以下の表の通りです。

控除を受ける納税者本人の合計所得金額
900万円以下900万円超
950万円以下
950万円超
1,000万円以下
配偶者の合計所得金額48万円超 95万円以下38万円26万円13万円
95万円超 100万円以下36万円24万円12万円
100万円超 105万円以下31万円21万円11万円
105万円超 110万円以下26万円18万円9万円
110万円超 115万円以下21万円14万円7万円
115万円超 120万円以下16万円11万円6万円
120万円超 125万円以下11万円8万円4万円
125万円超 130万円以下6万円4万円2万円
130万円超 133万円以下3万円2万円1万円

14. 「扶養控除」は区分によって控除額が変わる

対象は納税者本人が親や子ども、その他の親族を養っている場合です。

扶養親族には以下のような条件があります。

  • 配偶者以外の親族、里子など
  • 納税者と生計を共にしている
  • 年間の所得が48万以下(または給与収入が103万円以下)
  • 青色申告者の事業専従者として、その年一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者ではない

またその年の12月31日時点で16歳以上の扶養親族が対象です。

計算方法は以下の表の通りです。

区分控除額
一般の控除対象扶養親族
※その年の12月31日時点で16歳以上の扶養親族が対象
38万円
特定扶養親族
※その年の12月31日時点で19歳以上23歳未満の扶養親族が対象
63万円
老人扶養親族
※その年の12月31日時点で70歳以上の扶養親族が対象
同居老親等以外の者48万円
同居老親等
※納税者か配偶者の実の親や祖父母で、ふだんから同居している人
58万円

15. 「基礎控除」は合計所得金額が2,500万円以下の人が対象

納税者の合計所得以外の詳しい条件は設定されていません。
控除額は合計所得金額に応じて一律で決まっています。

合計所得金額控除額
2,400万円以下48万円
2,450万円以下32万円
2,500万円以下16万円

ただし合計所得金額が2,500万円を超える場合は控除は適用できません。

まとめ

所得控除を理解し税金の負担を軽くしよう

確定申告をする際には所得控除の種類別の対象者や条件を理解しておくことが大切です。
該当するものがあれば所得から一定の金額が差し引かれ、税金も安くなるため納税者の負担も軽くなります。

受けられる控除は、すべて受けるようにし正確な所得を申告しましょう。


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