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サラリーマンの副業で会社の設立は可能?その方法と注意点

2021年09月10日(金)12:09 PM

2018年1月には「働き方改革」に基づき、政府は副業・兼業の普及促進に取り組み、2020年9月には企業も雇用されているサラリーマンも安心して副業・兼業に取り組めるようにルールの明確化やガイドラインの改定を行っています。[注1]
このように副業が推奨される中で、実際に副業で一定の利益を得て「そろそろ個人事業主からステップアップしたい」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回はサラリーマンの副業で会社設立が可能かを解説するとともに、会社設立のメリット・デメリットや注意点をご紹介します。

[注1]厚生労働省:副業・兼業
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html

サラリーマンの副業で会社の設立は可能?

法律的な観点から言えば、サラリーマンの副業で会社設立は全く問題ありません。
しかし、勤務先が就業規則などで副業を禁止している場合、副業が発覚すると何らかの処罰が与えられるリスクがあります。
勤務先に会社設立がばれるのは、年金事務所からの社会保険料の通知が主です。この場合、「自分自身は設立した会社から役員報酬を受け取らず、代わりに配偶者などが受け取る」といった手続きを取れば、勤務先にばれずに会社を設立できます。

副業で会社を設立するメリット

「個人事業主のままでいいのでは?」と思うかもしれませんが、副業で会社を設立すると税金や得られる仕事における大きなメリットがあります。

給与所得控除を活用できる

サラリーマンが会社を設立して代表取締役になると、副業で得た所得を「役員報酬」として受け取れます。役員報酬は「給与所得控除」の対象ですから、個人事業主として同じ額の所得を得た時よりも税金を抑えることができます。

経費の計上範囲が広がる

会社は利益を得るための存在であり、その活動の全てが事業につながると考えられています。そのため、個人事業主よりも経費の計上範囲が広く取られています。
例えば、個人事業主では経費にできなかった

  • 自分や家族への給与
  • 生命保険の掛け金
  • 自宅の家賃や保険料

なども経費に計上できます。
経費を計上するほど、課税対象となる所得は小さくなります。その結果、節税につながるのです。

個人事業主よりも社会的信用が増す

副業で会社設立をするメリットとしては、社会的信用の向上も挙げられます。
個人事業主は社会的信用が低く、融資の条件が厳しい、あるいは断られるといったことがあります。また、個人事業主との取引を避けている企業もあります。
会社を設立すると社会的信用が増し、取引先や金融機関とのやり取りがスムーズに進む可能性が高まります。

副業で会社を設立するデメリット

副業での会社設立はメリットばかりではありません。「こんなはずじゃなかった」と後悔しないようにデメリットも確認しておきましょう。

会社設立費用の負担が必要

サラリーマンが副業で会社を設立するデメリットは会社設立費用がかかること。
個人事業主は「開業届」の提出だけで完了しますが、会社設立には定款認証や登記申請の手続きにお金がかかります。
そのため、株式会社の設立には最低でも約20万円、合同会社の場合には約10万円が必要です。

決算処理が複雑になる

個人事業主の場合、確定申告を自力で行うことはそこまで困難ではありません。
しかし、会社の決算は複雑な手順で計算する上、法人確定申告の書類は専門用語が多く用いられており、理解するのが大変です。
そのため、多くの会社は決算処理を税理士に依頼していますが、その分の依頼料は負担する必要があります。

赤字になっても課税される

個人事業主の場合、事業が赤字になれば税金を課せられる心配はありません。
しかし、会社を設立して法人化すると、課せられる税金があります。それが「法人住民税の均等割」です。
法人住民税は「所得割」と「均等割」から構成されており、均等割は法人の規模(資本金)によって納税額が決定されています。そのため、赤字かどうかに関わらず最低でも約7万円の支払いが求められてしまうのです。

副業で会社を設立する際の流れ・注意点

会社設立では多くの書類を不備なく揃えて期限までにテンポ良く申請する必要があります。ここでは会社設立の流れや注意点を具体的にイメージできるようご紹介します。

会社設立の流れ

会社設立の流れは以下の通りです。

定款の作成

定款は会社の運営に関する根本原則を記載した書類です。会社設立では必ず作成する必要があります。
サラリーマンの副業で会社を設立する際にはそこまで厳密な定款は必要ないため、公証役場のホームページ等にある定款のテンプレートを参考にしながら作成すると良いでしょう。作成後は公証役場で定款認証を受けます。
定款認証の費用は

  • 電子定款認証:50,000円
  • 電子定款認証でない場合:90,000円

となっています。

資本金の払い込み

会社を設立する際には「資本金」を銀行口座に払い込む必要があります。
会社法では資本金は1円でも問題ありませんが、資本金が1円だと社会的信用が低くなり、せっかくの会社設立のメリットを失うことになってしまいます。
事業の運営費としての役割もあるため、数十万円から100万円程度は用意しておくと安心でしょう。
資本金の払い込みが完了したら、通帳のコピーを取って残高が証明できるよう準備しておきます。

登記申請

法務局に必要書類を提出して登記申請を行います。

必要となる書類は以下の通りです。

  • 登記申請書
  • 登記免許税の収入印紙を貼付した台紙
  • 登記すべき事項を保存したCD-R
  • 定款
  • 取締役の就任承諾書
  • 払込証明書
  • 印鑑(改印)届出書
  • その他、必要な書類

登記申請には、

  • 登記免許税:15万円
  • 収入印紙代:4万円
  • 謄本の発行手数料:2,000円

が必要です。

法務局に登記申請を行い、特に不備等に関する連絡がなければ、無事に会社設立となります。

副業で会社を設立する際の注意点

副業で会社を設立する際には、以下の2点に注意しましょう。

会社設立には時間と手間がかかる

会社設立の手続きを全て完了させて事業を始めるまでには2~3週間ほどかかります。
本業に支障が出ないよう、早めに準備に取り掛かると共に、必要に応じて司法書士や税理士などの専門家の手を借りるようにしましょう。

万が一廃業する場合にもお金が必要

個人事業主であれば、廃業時に必要なのは「廃業届」などの書類提出だけです。特別な費用はかかりません。
しかし、会社を設立すると、

  • 解散の登記:3万円
  • 清算人の登記:9,000円
  • 清算完了の登記:2,000円

といった具合に、廃業にもお金がかかります。
会社設立の前に万が一廃業した時のことも考慮しておきましょう。

まとめ

副業での会社設立は事前の情報収集と準備が大切!

サラリーマンの副業で会社を設立する際には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリット
  • 給与所得控除を活用できる
  • 経費の計上範囲が広がる
  • 個人事業主よりも社会的信用が増す
デメリット
  • 会社設立費用の負担が必要
  • 決算処理が複雑になる
  • 赤字になっても課税される

これらを踏まえて、個人事業主か会社設立(法人化)かを決定しましょう。

会社設立は、

  • 定款の作成
  • 資本金の払い込み
  • 登記申請

の3ステップで行います。
それぞれのステップで、必要な書類や費用を準備しなければなりませんので、よく調べて不備なく用意しましょう。


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