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個人事業主と会社設立はどっちがいい?メリット・デメリットを比較

2021年09月10日(金)12:09 PM

事業を始める際には、個人事業主か会社設立かを選ばなければなりません。
しかし、個人事業主と会社設立を選ぶには、それぞれの違いやメリット・デメリットを理解しておく必要があります。
そこで今回は、個人事業主と会社設立それぞれの違いやメリット・デメリットを解説します。また、個人事業主か会社設立かを選ぶ際のポイントもご紹介します。

個人事業主と会社設立の違い

まずは個人事業主と会社設立の違いを解説します。

個人事業主とは

個人事業主は、会社や組織に所属せずに「個人」で「事業」を営む人を指します。「自営業者」と呼ばれることもあります。
税務署に開業届を提出すれば、すぐに個人事業主になれます。「屋号」と呼ばれる商業上の名前を使って取引を行うことも可能です。

会社設立(法人化)とは

会社設立(法人化)は、法律によって人間と同様の人格を与えられた「法人」と呼ばれる組織を立ち上げること。
会社設立の場合には

  • 公証役場での定款認証
  • 法務局での登記申請
  • 行政機関での社会保険加入

など、様々な手続きが必要です。
会社設立後は「会社名(商号)」を使って、個人と同様に銀行口座開設などの手続きができるようになります。

個人事業主のメリット

個人事業主のメリットは何といっても「手軽さ」です。
先ほどもお話しした通り、税務署に開業届を提出すれば、すぐ個人事業主としての活動を開始できます。特別な費用はかかりません。
また、個人事業主の場合、確定申告や会計処理もそこまで難しいものではなく、会計ソフトを使えば自分でも十分対応できます。さらに所得に応じて課税されるので、利益が得られない間は課税額が低く抑えられます。
このように事業運営を続ける上でコストを抑えられるのが個人事業主の大きな利点です。

個人事業主のデメリット

個人事業主のデメリットは「無限責任」であること。
法人の場合は負債が発生しても、それは「法人」が背負うものであって、「経営者個人」の負債にはなりません。
しかし、個人事業主の場合には事業で負債が発生した場合、自分自身が保有している財産を負債の返済に充てる必要があります。財産を費やしても負債を返済しきれない場合には自己破産の手続きをしなければなりません。

会社設立のメリット

会社設立のメリットには以下の2点が挙げられます。

社会的信用が得やすい

会社設立のメリットは「社会的信用」が得やすいこと。
会社は簡単に設立・廃業ができないため、会社設立によって「事業が安定している」と判断され、社会的信用を得られやすくなります。また、会社の「定款」や「登記簿謄本」は誰でも閲覧でき、会社内部の実態が見えやすいことも、信用度を高めるポイントとなっています。

節税方法が増える

会社を設立すると、個人事業主よりも節税方法が増えます。その一例を以下に上げます。

給与所得控除を使う
役員報酬に給与所得控除を使い、課税所得を抑えることが可能です。
経費の幅が広がる
個人事業主では経費にできなかった家賃や生命保険料なども経費にできます。
法人税の税率は一定
個人事業主の場合、所得が増えるほど税率も上がりますが、法人税の場合は800万円まで一定です。そのため、所得が500万円程度の場合には法人化した方が税制面ではお得になる可能性があります。

会社設立のデメリット

会社設立のデメリットとしては「コストが大きい」ことが挙げられます。
会社設立の申請には以下のような費用がかかります。

  • 定款印紙代:4万円
  • 公証人認証手数料:5万円
  • 設立登記申請用の謄本の請求手数料:約2,000円
  • 登記免許税:資本金×0.7%

「資本金×0.7%」が15万円に満たない場合には、15万円

また、必要な書類を自力で揃える場合には時間や労力がかかりますし、税理士や司法書士に依頼する場合にはその分の依頼料が必要です。

また、事業が赤字となっても約7万円の税金が発生する点もデメリットといえるでしょう。

個人事業主か会社設立か選ぶポイント

「個人事業主と会社設立、どちらで事業を始めよう?」と迷っている方に、個人事業主か会社設立かを選ぶ3つのポイントをご紹介します。

課税所得の金額

個人事業主にかかる税金の税率と控除額は以下の表に示す通りです。

事業税住民税+所得税(控除額)
195万円以下業種に応じて3~5%
290万円の控除あり
15%(-)
195万円超~330万円以下20%(9.75万円)
330万円超~695万円以下30%(42.75万円)
695万円超~900万円以下33%(63.6万円)
900万円超~1800万円以下43%(153.6万円)
1800万円超50%(279.6万円)

一方、法人に課せられる税金と税率は以下のようになります。

年間課税所得法人事業税法人税法人住民税
400万円以下2.7%18%3.11%
400万円超~800万円以下4.0%18%3.11%
800万円超5.3%30%5.19%

事業での課税所得と、個人事業主・法人に課せられる税金と税率を比較し、メリットが大きい方を選ぶと良いでしょう。

資金調達の方法

「金融機関から融資を受けたい」と考えている場合、社会的信用の低い個人事業主では融資を受けられない場合があります。
個人事業主でも融資可能な日本政策金融公庫を使うか、会社設立で信用度を高めるかを検討しておきましょう。

まとめ

自分の事業が個人事業主と会社設立のどちらに適しているか見極めよう!

個人事業主と会社設立のメリット・デメリットを表にまとめました。

個人事業主会社設立
メリット
  • 手軽に事業を始められる
  • 会計処理等も簡単
  • 社会的信用を得やすい
  • 節税がしやすい
デメリット
  • 無限責任を課せられるため、個人財産も負債の返済に充てる必要がある
  • 会社設立のコストが大きい
  • 赤字になっても税金が課せられる

事業は長く続けていくものですから、目先のお得さや楽さではなく、将来も見据えた上で判断するようにしましょう。


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