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有限会社から株式会社に移行する必要性やその手順を解説

2021年09月10日(金)12:09 PM

有限会社と株式会社の違いは資本金や資金調達の方法にある

2006年の法改正以降、新しく有限会社を設立することはできなくなりましたが、まずは有限会社と株式会社の違いを確認しましょう。

有限会社株式会社
資本金額300万円以上1000万円以上
社員数50名以下制限なし
役員数取締役1名取締役3名以上
監査役1名以上
決算の公告義務なし株主総会あり
取締役会の設置不要必要
取締役の任期なし2年

一番大きな違いは、必要な資本金額です。
旧制度では株式会社を設立するためには資本金が1000万円以上も必要だったので、家族経営や小規模会社は資本金が300万円で良い有限会社の方が設立しやすかったのです。
他にも違いとして挙げられるのは、資金調達の方法です。
株式会社は、株式を発行するので多くの資金の調達が可能であり、大きな事業を展開するのに向いています。
それに比べて有限会社は、出資者が経営者であることが多く、調達できる資金に限りがあります。
有限会社では事業を拡大しにくい一面があるため、規模の小さい会社向けでした。
また株式会社は、株主が配当を受け取ったり株主総会に参加する権利を持っていますが、有限会社は会社の重要事項を社長が決定できるため経営の自由度が高いという特徴もあります。

有限会社から株式会社に移行する必要はあるか

有限会社制度は廃止となりましたが、2006年以前に設立された有限会社は「特例有限会社」として存続するか、株式会社に移行するかのどちらかを選択しなければなりません。
今後も特例有限会社として維持し続けるか、それとも株式会社に移行した方が良いのか悩んでいる会社もあるでしょう。
ここでは、有限会社から株式会社に移行する必要があるのかについて説明していきます。

株式会社に移行すると、株式の譲渡制限を解除する「公開会社」になることができます。
株式が公開されると、より多くの資金調達ができるようになり知名度が格段に上がるため、取引先や金融機関から得られる信用度が高くなります。
多くの資金が集められることにより会社の規模は大きくなり、吸収合併を行うことも可能になるため、株式会社は大企業へと成長させることもできるかもしれません。
有限会社は吸収合併で存続会社になることは認められていません。
しかし、有限会社のまま現状維持していれば、取締役の任期がなかったり決算公告の義務が発生しないなどのメリットもあります。
特例有限会社は期間の定めや特別な手続きは必要なく、今後も存続可能です。
また、有限会社から株式会社に移行するときには、移行申請や印鑑の作成、社名の変更などあらゆる面で手間がかかるため、移行の必要性を感じない場合はそのままでいる選択もあります。
しかし、今後事業を拡大して社会的な信用を得たい場合は、株式会社への移行を検討した方が良いでしょう。

有限会社から株式会社に移行する際の手順を2ステップで紹介

有限会社から株式会社に移行する手続きは大変そうと思うかもしれませんが、意外と簡単に行えます。
移行の手順を2ステップで解説していきます。

定款変更の決議を行う

特例有限会社を名乗っていても、法律上は株式会社として扱われているため、定款変更のための決議を株主総会で行わなければなりません。
特別決議では、株主の過半数以上かつ、議決権の3/4以上の賛成が必要です。
株式会社への移行に伴い、同時に変更できる事項があります。

  • 有限会社以外の部分の社名
  • 役員の任期
  • 事業の目的
  • 株式の譲渡制限規定
  • 取締役会や監査役の設置

これらも特別決議で検討することができます。

株式会社の設立登記を行う

定款を変更したあとは、本店所在地の場合は2週間以内、支店所在地の場合は3週間以内に株式会社設立登記と特例有限会社解散登記を行います。
その時必要な書類は下記の2点です。

  • 特例有限会社の商号変更による株式会社設立登記申請書
  • 特例有限会社の商号変更による解散登記申請書

この書類を準備、会社の所在地内の法務局に提出します。
申請にかかる費用は、株式会社設立の登録免許税として3万円、有限会社解散登記の3万円、合計6万円以上が必要となります。

この他に、株式会社に移行をしたら新しい商号の印鑑に作り替え、印鑑証明書を法務局に提出しなければなりません。

まとめ

有限会社から株式会社への移行は簡単にできる

有限会社は現在、特例有限会社として法律では株式会社として扱われていますが、過去には設立のための条件が有限会社と株式会社で大きく異なりました。
今では新たに設立できなくなった有限会社を株式会社に移行するかどうかは、会社の規模や事業内容により検討する必要があります。
移行手順は非常にシンプルです。定款変更後は速やかに管轄の法務局に提出しましょう。


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